第1章

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ぼくは羽田空港についた。 つい2時間程前まで長崎にいたのに…。 まるで魔法のようだ。 既に深夜の23時に近く、夏の暑さも多少柔らぎ、風が吹くとほんのり心地よい。 普段のぼくなら、そろそろ眠くなってくる時間だけど、今晩は全く眠くない。 生まれて初めて乗った飛行機に興奮しているのは分かるけど…。 理由はそれだけでは無いようだ。 初めて九州から出る旅行。 初めての東京。 …それから…。 それは今朝。 朝食のパンにかじりついて、ニュースや芸能情報やらボーと見ていた時だ。 お父さんから突然言われた。 「ナツキ。 今日の夕方からお父さんと一緒に東京行くばい…。 だけん、出かけても5時までには帰ってこいなっ。」 「えっ!?どういう事…?。 えっ!?えっ!?。 ぼく何も聞いてないんだけど…?。」 「11才になるお前の誕生日サプライズ演出ばいっ。 もっと大喜びするかと思ったが…。 意外と反応は無いのな…。」 お父さんは、ぼくの喜ぶ反応を期待していたのか。 少しがっかりした表情を見せていた。 ぼくは状況を上手く把握出来ず、困惑しっぱなし…。 思わず反発心が出る。 「イヤ、イヤ、イヤ…。 ぼくの誕生日、2週間も先じゃん。 突然そんな事言われても困るよ。 ぼくにも予定あるのに~。」 「突然じゃなかっ!!。 お前が毎年夏休み。 ドコか連れてけってうるさかばってん、こうやって有給とって時間まで作って…。 旅行に連れて行くんばい。 まだ出発まで10時間はあるっ!!。 問題なかろうっ!!。」 お父さんはそう言うと、不機嫌そうに仕事へと出かけていった。 それからその日はバタバタしっぱなしだ…。 まずは、友達とのプールの予定をキャンセル。 ノンちゃんとアッツンにラインで連絡して、二人にはお土産を買って来る事で手を打った。 ぼくはお昼ご飯も食べず、アタフタと旅行の準備を進める…。 ぼくのお父さんは、見た目は正直パッとしない…。 服はしまむらで買ってるんだけど…。 着こなしがダメで、なぜか分からないが格好悪く見える。 人柄は悪い人では無いけど…。 正直、授業参観に来てくれてもあまり嬉しくはないタイプだ。 だからなんだと思う。 お母さんはぼくが6才の時に、新しい男を作って出て行った…。 そして、そのまま離婚。 以来、お父さんとぼくの二人でずっと暮らしている。
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