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「ナツキ、たぶんこっちの方ばい。」
「うん、ちょっと待って…。」
羽田空港で遅い夕食を食べ終わったぼく達は、旅行カバンを持って外へ出た。
ふっと夜空を見ると星が見えて、ぼくは自然と涙がこぼれニヤけてしまう。
長崎の夜空と違わないはずなのに…。
嬉しさが湧き上がって、不思議と夜空が高く広く綺麗に見えた。
この理由は、初めて飛行機に乗ったからでも、初めて東京に来たからだけでも、説明は無理そうだ…。
お父さんと今、旅行をしている…。
ぼくにはそれが嬉しいみたいだ。
羽田空港から出たぼく達は…。
お父さんが事前に予約していたバスへと乗り込んだ。
これから向かう場所に行くには、この深夜便のバスが一番便利なんだそうだ。
今もぼくはドキドキしっぱなしだ。
けど、バスに乗り込んでからのぼくのドキドキは…。
羽田空港に到着したばかりのドキドキとは、明らかに違う種類へと変わっている。
なんだかバスの行き先に、平和島とかなんとか書かれていたけど…。
バス車内には、ピリピリとした張り詰めた空気がして、どうにも平和には程遠いような気がする…。
バスに一緒に乗り合わせてる人も、おじさんばかりで…。
周りの会話の端々に、ボートとか誰それのターンがどうのとか、ひきりに聞こえてくる…。
極めつけはコレ。
前の席の人が赤い鉛筆で、何かの紙に丸印をつけている。
もしかしてこれは…。
ある一つの予想が脳裏を横切る。
不安だ…、不安でしかたない…。
そうこうしていると、バスが目的地へと着いた。
外観から見て、ショッピングセンターか何かかな…?。
どんな所なんだろ?。
心から祈りながら、お父さんに連れられて行くと…。
そこは…。
24時間営業の天然温泉施設がある…。
BIGFUN平和島って所だった。
どうやら、ボーリング場やゲームセンターや映画館。
ドン・キホーテの入っている複合型施設のようだ。
「今夜はココで一晩過ごすばい。
さぁてナツキ、遅くなったけど風呂に入るか。」
「うんっ!!。」
ぼくの不安はひとまず解消した。
どうやらお父さんは、宿泊費を浮かす為にココへ来たようだ。
苦学生の貧乏旅行みたいだけど…。
まあ仕方がない。
車のローンとかも残ってるみたいだし…。
家の経済状況と明日からの旅行を考えると、不満を言う程でもない。
こういう旅行も、ぼくは楽しめる。
先ずはゆっくりと、天然温泉を味わおう。
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