第1章

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原因は分かってる。 お父さんの財布の懐事情が心配なんだ…。 お父さんは普段はちゃんとしていて、自分の小遣いの範疇でボートレースを楽しんでるみたいなんだけど…。 一回だけ見境なくなって、生活費にまで手を出して酷い目にあった事がある…。 今回は旅先だから、そんな事は無いと信じたいけど…。 一抹の不安が脳裏をかすめる。 『ダメだ…。 やっぱりぼくが側にいてしっかりしないと…。』 ぼくはお父さんの所へ、急いで向かう事にした。 『お願いだお父さん。 せめて旅費の方には手を出さないでっ!!。』 そう必死に祈りながら、お父さんの下へたどり着く。 するとどうだ…。 お父さんは、鎌倉の大仏以上の無表情な顔へと変貌していた…。 「どうしょうナツキ…。 これじゃ旅行の予定が狂うばい…。 次のレースで負けを取り返さんと…。」 クッ…。 やはり旅費の方に手を出し始めていたか…。 それにしてもレースで負けを取り返すって…。 ムチャクチャな事を口走っている。 「もう、お父さんっ!!。 コレ以上レースにお金使っちゃダメっ!!。 今日の泊まる所とか、帰りの旅費とかどうするの?。」 「それは心配なかっ!!。 ちゃんと観音崎京急ホテルって所に予約ば入れとるし…。 旅費の分はちゃんと残しとる…。 ただ、明日から東京観光する為の資金が足りそうになかばい…。 コレじゃ食うに食えんようになる。 次のレースで負けたら、人生最後のボートレースにするばってん…。 だから頼むナツキ。 堪忍してくれっ!!。」 お父さんはそう言うと、手を合わせて頭を深々と下げてきた。 拝み倒されても正直困る。 「え~…!?。 本当に負けたら人生最後にするの?。」 「するっ。 絶対になるからっ!!。 頼むっ1000円だけっ!!。」 「分かったよ…。 ちゃんと約束したからねっ!!。」 「よしっ!!。 ちなみにナツキは、白黒赤青緑黄色の中で好きな色3つは何ばい?。」 「え~と…。 赤と…あと白と黄色かな…。」 「分かった。じゃあ舟券を買って来るばいっ。」 そういうとお父さんは、たぶん人生最後になる舟券を買いにいった。
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