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そう感じとった瞬間。
ぼくの頭から血の気が一気に引いた…。
寒気と怖気が同時に襲いかかり。
今まで立った事の無いような鳥肌が全身に起つ。
夏だというのに全身がガクガクと震えだした。
フと気づいたら、ぼくらの運命のかかったレースは既に終わっていて…。
ぼくには祈るヒマすらなく…。
奇跡は…再び…。
起きなかった…。
お父さんはポツリと囁くように呟いた。
「ワシの人生終わった…。」
家族がめったにしない事をしだしたら、注意した方が良い…。
それは何らかの変調の兆しだ…。
それも大概、悪い方向の…。
お父さんはバス停で、顔を突っ伏したままずっとピクリとも動こうとしない。
何とかぼくが励まさないと…。』
せめて自殺だけでも、思いとどまらせなければ…。
ホントにお父さんの人生が終わりかね無い。
「お父さん大丈夫だよ…。
ぼくもバイトして、家計を助けるから…。
生きてたら、大概どうにかなるって…。
ほら…お金は増えなかっただけで、一応あるんだし…。
ホテルにもう行こうよ。」
ぼくがそう言い終わった時だ。
不意に後ろから声をかけられた。
「ナツキちゃん?。
あなたナツキちゃんね。
とすると、アキヒコさんはそっち?。」
誰?。
ぼくとお父さんの名前を知ってるなんて…。
いったい誰なんだ…?。
借金の取り立て人だろうか?。
それにしても綺麗な女の人だ。
見た目からしたら30代前半かな?。
その声を聞いた途端、お父さんはガバッと顔を上げると、いきなりその人に土下座しだした。
「ハルコさんごめ~~ん!!。
明日のご飯、ラーメンで勘弁してくれっ!!。」
「お金の事は気にしなくと良いってアキヒコさん…。
私ラーメン好きだし。
それより夕飯まだでしょ。
ワリカンで一緒に美味しいモノ食べに行こうよ。」
「ホワッつ…!?えっ?。
お父さん…誰この人?。」
ぼくがあっけに取られていると、お父さんが顔を上げて説明をしだした。
「ナツキ、この人はなぁ。
ハルコさんって言って、女性ボートレーサーをしとる。
そして、今をもってお父さんと正式に付き合う事になった人ばい。」
「へっ!?えっ!?ふへっ?。」
ぼくは驚き過ぎて、開いた口をパクパクするしか出来なくなった。
一段落して二人の話しを整理すると、こういう事らしい。
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