-理由-

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『夏月…』 バーの店長は夏月と仲がよい。もちろん彼女ともだ。 『いいのか??』 夏月は黙ったままだ。 『店長…いつものやつくれ』 『お前、あいつのこと好きだったんだろ』 夏月は黙ったままだ。 俯いている。 『なぁ…いつもの。今夜は酔いたいんだ…頼む…』 もう何も言わない。 黙って“いつもの”を出した。 『飲み過ぎるなよ…』 『あぁ…』 夏月は知っていた。 これから起こる事件を。 夏月は日系アメリカ人。その事実は店長すら知らない。 結局は上に逆らえなかった。組織は、彼女自身しらないうちに彼女を“エージェント”にしていた。 『俺にもっと力があれば…』 クソォォォォ!!!!!!! 机に頭を打ちつけた。 血が滲む。 店長は止めない。 したたり落ちる血は、どこか切なさ混じっていた。
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