-理由-

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『あぁ~…マジナイわぁ…ちょっと聞いてよ!! あっ…ちょっと待ってね…よし…よし…よいっしょ』 座り位置が悪かったらしい。座り直すときの掛け声まで電話で言ってしまう。今夜はリップサービスが完璧だ。 この調子だと、今夜はヒロコが聞き役に回るだろう。 『笑えないっつーの…焼き肉三軒ハシゴとか!!今までしたことないょ。。けど…まぁ…しかたないじゃん??おごってくれんならさ…』 彼女はやたらとモテる。美人とカワイイの中間のような顔立ち。 もしかしたら万人受けしているのかもしれない。 『…まぁさ…フゥ… わるくねぇし…エッ??あっそうそう』 彼女は聞き上手な部分もあるため、いくら愚痴っても相手の言葉を見逃さない。もしかしたら…喋りの神でも宿っているのではないかと思わせるような喋りだ。 と、話はいきなり本題に入る。 『あたしさ…明日からちょっと旅行いってくるわ。…うん。うん。お土産?あぁいいよ。それでさ…頼みがあるんだけど』 『…うんいいよ??なぁに?』 ヒロコからはよくお願いするが、彼女からは珍しい。 『夏月にさ。渡してほしいもんがあるんだよね。…たのんでもいいかな』 夏月に…渡したかったもの。手紙だ。 手紙にはいろいろなことを書いて封をした。 一番最後の行には -ありがとうね- と一言付け加えた。 いつもそうだ。 いつもあいつに振り回されていた。 だけど…良かった。
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