第1章

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 旦那と相談した結果、私達のバンド生活は終わりとし、彼は慣れない営業へと職を変えた。私はバイトを止め、悟の病院に寝泊りすることになった。私達の新婚生活は悟によって劇的に変化し別居生活になったのだ。 「そんなに心配することはない。昔とは違って携帯電話もあるんだ。どこかで行き倒れたりすることはないよ」 「倒れたら、その場で終わりだけどね」  私は旦那に噛み付きながら当時を振り返った。  今のようにSNSが普及していなかった私達のコミュニケーションは公衆電話とポケベルだけだった。連絡も毎日取れるわけではなく、旦那から連絡がない時もあった。私は不安に苛まれながら市が運営する心臓を守る会に入り、そこでひたすらに悟の病気について学んでいった。  悟の病気がなぜすぐわかったのかというと、それはチアノーゼという酸素欠乏症が見られたためだった。心臓疾患を抱える者の多くが血流に異常をきたし、肌が青黒く変わってしまうのだ。  悟は全身をくまなく調べられ、心臓に問題があるとわかった。その時に4つの問題があるといわれ、ほっとけば1年の命にもなると宣告された。私は意味がわからず癌告知を受けた患者のように固まり頷く他なかった。 「悟の楽器は何になるんだ?」
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