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『松田さんが四季さんの部屋に入った時、お二人が私の前で話し始めたんです。
この計画大丈夫かって? 野口さんが。もともとこの仕事、納期が間に合わない状況だったんですね。でも取引先との契約を破るわけにはいかない。こちらのミスで納期が間に合わないとなればその取引先との信頼関係が失われてしまう。だから、盗まれたことにしようって。そういう計画だったんですね。私を陥れて、できれば両親から賠償金までもらおうとするなんて』
両親の下りで手に力が入って文字が歪んでしまう。
『松田さんが考えたらしいですね。野口さんが証拠が足りないんじゃないかと石川さんと話していました。状況証拠だけでは犯人にしたてあげるには足りないんじゃないか。みたいなことを私の目の前で話していました』
「お二人は耳が聞こえないと思っているから安心して話していたんでしょうけどね」
四季が言う。松田が野口をにらみつける
「だって、その女が証拠がないとって……」
松田が今度は四季をにらみつける四季は肩をすくめて見せるだけだ。
「証拠なんて別になくてもよかったんですよね。松田さんとしては、明日香さんの両親の協力さえもらえれば。取引先との関係を取り持ってくれるかもしれませんから。明日香さんのご両親はそっち方面にも顔がきくそうですから」
ぎりりと歯ぎしりが聞こえてきそうな表情だった。
「何の証拠もない話だ。そこの二人がそんな話をしたというのは明日香の作り話だ」
松田が声を振り絞るように言う。
「まぁ。そう言うしかないですよね」
四季はソファから立ち上がると石川が座っているソファの横に行くと四つん這いになってソファの下に手を伸ばす。起き上がった時に持っていたのは録音画面が表示された携帯電話だった。
「さっき転んだ振りをしたときに携帯をソファの下に滑らせておいたんです。中身聞きますか? ばっちり録音されていますよ」
再生ボタンを押すと、明日香が言った通りの石川と野口の会話がきれいに録音されていた。
「最近のスマートフォンは感度がいいですよね」
四季の言葉に松田は大きくため息を吐いた。
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