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明日香の正面のソファに困った顔をして座っているのはこの会社の代表で社長の石川。その後ろに部下二人が立っている。右にいる細身の男が松田。左の背の低い男が野口。
新人の明日香を入れても従業員がたった四人の小さな会社だ。仕事の内容はIT関係の仕事だということしか明日香は理解していない。
もともと、明日香は経理として雇われたのだし、色々と情報が重要な機密になりがちなジャンルの仕事なので、雑用や経理を担当してくれる従業員にはIT関係の知識は持っていないほうが都合がいいというのが石川達の考えらしい。
慎重すぎる気はするが、だからこそ就職できたのだと思えば明日香にとってはどうでもいいことでもあった。
三人は一応石川が代表兼社長となっているが三人が共同でこの会社を立ち上げたらしいので上司と部下というよりは対等な関係らしい。
「ほら、そんなうつむかれても困るんだよ。明日香さん。私としては別に明日香さんを警察に届け出たいとは思っていないんだ。ただデータだけ返してくれればいいんだよ」
右手を差し出しながら優しい声で石川が言ってくる。しかし、明日香には首を横に振ることしかできない。
知らないものを返せと言われてもただ困ることしかできない。
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