第1章

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ことの起こりは今日の昼休み。 昼休憩の時間になったので野口が外のコンビニに弁当を買いに行くと言った。明日香は自分が何か買ってこようかと親切心で提案したが、野口はそれをそこまでしてもらうのは悪いからと断った。 次に松田も会社のビルの一階にある牛丼チェーン店に昼食を食べに行くと出て行った。これはいつものことだ。松田は会社に来ている日は毎日昼食、同じ店で昼食を食べている。メニューも同じだそうだ。毎日昼食のメニューを考えるのが面倒だという理由らしい。 二人が出て行ったので、明日香は自分で作ってきた弁当を机の上に出して食べ始めた。石川も自分で作っているらしい弁当を机の上に取り出していた。 その時、石川の携帯電話が鳴った。石川は私用の携帯電話をオフィスでは取らない。人に電話の内容を聞かれるのが嫌いらしい。携帯を持ってオフィスを出ていくのをなんとなく見送って明日香は自分の弁当を食べ始めた。 昼休憩が終わって三十分ほどしたころ、石川が自分の机の引き出しを何度も開け閉めしながら騒ぎだした。 重要な取引先とのデータを入れていたUSBが無くなっていると騒いでいたのだ。 従業員全員でオフィスの中を探したがUSBは見つからなかった。 「盗まれたんじゃないのか?」 言い出したのは野口だった。昼前までは確実にあったと言う石川。オフィスに一人きりの時間があったのは? そこまで話が進んで明日香は顔がひきつるのを隠せなかった。三人が明日香の顔に疑惑の視線を向けていたからだ。
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