第1章

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一人目は石川だった。部屋の中にあった小さなテーブルに向かい合わせに座って詳しい事情を聴く。 「どうして、明日香さんが犯人だと思っているんですか?」 「他に盗むことができる人物がいないからですよ。私は昼休みになる直前にそのUSBを自分の机の引き出しに入れていますから。その昼休みまでは確かに私の机の引き出しに入っていて、昼休みにオフィスに一人でいたのは明日香さんだけですから」 「机にカギは掛けていなかったんですか? 無人にするときはカギをしていますが、オフィスに誰かいるときはカギなんて掛けませんよ」 「昼休みに電話がかかってきたらしいですね? それは誰からでしたか?」 「……無言電話だったよ。あれはきっと明日香さんがかけてきたんですよ。私がオフィス内で私用の電話をしないのは彼女も知っていることですから」 「オフィスを離れたのはどれぐらいですか?」 「無言電話でしたからせいぜい五分程度ですか? それでもUSBを盗むには十分な時間ですよ」 「ありがとうございます。聞きたいことは以上です」
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