第1章

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 天気予報は雨の予報だったかな...などと思いながら光太郎は着ていたジャケットを真理愛の肩にかけて立ち上がり左手を差し出した。 「とりあえず雨宿りしよう!」  真理愛はその大きな瞳で光太郎を見上げてニッコリうなずき立ち上がると左手で光太郎の指先をつかんだ。 「うん!」  二人は池を廻り仁王門まで足早に行くと一瞬立ち止まりかけたが、左右の仁王像を交互に見上げ顔を見合わせると、急に笑い出しながら新緑の桜並木の参道を再び雨に打たれながら赤門まで走った。  軽く絡めただけの指と指は、いつしか手と手がしっかり繋ぎ合っていた。  雨は降り方を徐々に増し二人が息を切らしながら赤門にたどり着いた時には本降り手前になっていた。  二人は大きく屋根の張り出した赤門の下で雨の止むのを待つことにした。  真理愛はバッグからタオルを取り出すと光太郎と自分の濡れた服を拭きながら言った。 「手を繋いでいるのを仁王様に睨まれてるような気がして仁王門で雨宿りはまずいなって思っちゃった!」 「アハハ..やっぱり!?(笑)」  まるでいたずらをして逃げてきた子どものような穢れない笑い声は、雨音の隙間を縫うように称名寺の参道に消えてゆく。  フレンズでの行間に込められた想いを読み解く、不確かなやり取りではなく...目と目で語り合い...肌と肌で触れ合い...互いの息づかいまで聞こえる...そんな生きてる実感を味わいながら...  ...立場はわきまえている、だから口には出さない。  不貞行為を働いたわけではない...おしゃべりをしてるうちに雨が降ってきて雨宿りに走るときに手を引いてもらっただけじゃない。  真理愛はそれ自体が言い訳に過ぎないとわかっていたがどんどん惹かれてゆく光太郎への想いに抗うことはしなかった。寧ろ言葉に出てしまいそうなほど熱い魂の鼓動を必死に抑え込みながらもこの際、行き着く先を見てみたいという刹那的な衝動にも駆られていた。  そして同時に自分の立場を守ろうとするいやらしさを責め恥じたがその時の彼女にはどうすることもできなかった。  光太郎に会えば彼への想いは加速度を増していくことはわかっていた。
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