第1章

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 仁王門は今は通り抜けは出来ないものの間を通して向こう側が見える。  太鼓橋のたもとにつば広の帽子に深い光沢のあるワンピース姿の女性が池を眺めながら立っている...が、おそらく別人であろう。  あの日の彼女のイメージとはあまりにも違うし待ち合わせ時間よりも15分も早い。  おそらく彼女は来ないだろうが、現実に現れなければそれはそれでショックだし、だからそのショックを和らげる自分への言い訳、相反する現われた時のドキドキ感、果てはいっそのこと現れてくれない方が気が楽かも...或いはひょっとして太鼓橋のたもとにいるタイシルク(?)のワンピースがそうかな...など光太郎は年齢に似合わず気持ちの置き場に戸惑いながらこんな気持ちになるのはいつ以来だったかな...などと考えていた。  そしてゆっくり深呼吸をして仁王門を左に迂回して境内へ入って行った。  ザッザッという砂利を踏む音が平日で人気のない静かな境内に響き、否が応にも人が歩いてくるのはわかる。  果たして、その女性はゆっくり振り返った。  光太郎と目が合うと一瞬、目が大きく見開き何かを言いかけ振りかけた手を慌て引っ込めハニカミながら丁寧なお辞儀をした。 『彼女だ!本当に来てくれたんだ!』  光太郎は彼女が来てくれたうれしさと慌てて引っ込めた手のしぐさの可愛らしさに胸がくすぐられる思いを感じながら思わずクスッとッ笑い軽く会釈を返した。 「ごめんなさい、お待たせしてしまいました」 「いいえ、私 実家が近くなもので...それもあって早く着きすぎてしまったんです...」 「...でも、良かった! 僕は来てくださるとは思ってなかったのでかなり驚いています。」 「私こそ...一人で称名寺をお散歩するのではないかとドキドキしながら参りました、光太郎さんっ!」 「...えっ!...何故ボクの名前を?」  光太郎は何が起こったのかわからずにいた。 「...はぃ!岬 光太郎さん、横浜市内に高校生のお嬢さんと二人暮らしの建築家さんですよね!」 ぽかんとしてる光太郎を前に彼女はニッコリしながらつづけた。 「フレンズをされてるでしょう?お友だちに「秋月(しゅうげつ)」っていますでしょ...?」 「えっ!? ...あぁ、仙台の...お会いしたことはないけどフレンズ友だちとして仲良くしてもらっています。あぁ、彼女のお友だちですか!」
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