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と、若林は真剣な顔つきになって、腕を組んだ。二人がうなずき合っていると、店員がやって来て飲物をテーブルに置いた。真希はマティーニを飲むと、若林もウイスキーを一口飲んだ。真希にはどうしても言っておきたいことがあったので、お酒の力を借りるため、もう一口飲んでグラスをテーブルに置いた。
「若林さん。」
と、言いながら真希が若林に体を向けると、若林も真希の方に体を向けた。真希の心臓の鼓動が早まっている。
「私、若林さんのことが好きでした。」
若林の顔が赤くなった。
「でも、若林さんに彼女がいるのも知ってます。見かけたんです。葉山マリーナで。」
若林が何か言い出そうとするのが分かって、真希は言葉を続けた。
「知ってたけど、今日、会おうと思ったのは、会わなかったら後悔するだろうと思ったから。」
真希は少しだけうつむいてから、顔を上げた。若林と視線が合った。
「でも、この気持ちはずっと封印しておきます。今日は本当にありがとうございました。」
言い終わって、真希はマティーニを一気に飲んだ。若林は、ウイスキーのグラスを手に取ったまま、じっとテーブルの上を見つめていた。
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