第1章

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「そうでした。ただ、寂しくて、いたらいいなと、夢を見ていました……」  一人ひとりに説明すると、全員が納得してくれた。 「タクシー代金」  女性の一人が、笑いながらお金をくれ、握手して去っていった。 「あの、個人からは代金は貰わないのですか?」  百舌鳥は、一人でお茶を飲んでいた。 「手数料はいただいた。ここは、そういう会社でね。俺達はこの社会に雇われている。いわば公務員ね」  しかし、弁当でここまで働かされていいものか。俺が、帰ろうとすると、百舌鳥は就業規則を出してきた。 「これ、読んでおいて」 「……いりません」  何故、俺が就業規則を読まなくてはならないのか。 「いや、就業規則というのはね、最初に納得しておいたほうがいい」  それは、そうなのかもしれないが、ここの就業規則が、何故、俺に関係あるのだ。 「明日は、九時から来てね」  だから、どうして、そうなるのだ。 「遊部君。君にも知りたいことがある筈だ。だから、きっとここに来る」 「来ません」  俺は、就業規則を無理やり持たされながら、生葬社を後にした。  俺の知りたいこととは、何であろうか。俺は、一人で暮らしているアパートに戻って、テレビをつけた。まず、この容姿は、何故なのかは疑問であった。  自分で見ても、日本人には見えない。  レンジでご飯を温めると、ふりかけを出す。ふりかけのおにぎりが、俺の好物で、失業中なので、これで夕食は終了となる。  水道代も馬鹿にならないが、やはり、シャワーは浴びたい。シャワーを浴びると、どうしてもビールが飲みたくなってくる。 「我慢……やっぱり、ダメ」  安いアルコールを缶で一本飲むと、もうひとつ知りたい事があった。  幼馴染の死。俺が、おもいっきり季節を外したインフルエンザにかかっている時に、同じ高校に行っていた幼馴染が、事故死していた。  いいや、知りたいことではない、出来なかったことであった。俺は、幼馴染で親友でもあったのに、死も知らなければ、葬式にも行かなかった。  学校に行き、どうして来ていないのか、隣の席に聞いて、そして事故死を知ったのだ。  誰も俺に教えてくれなかった。そもそも、誰も、そいつと俺が親友だとは思っていなかったのだ。  俺は、かなりショックであった。  そして、ショックのせいで、その後も、仏壇にもお墓にも行けなかった。心が、荒んでいたのかと思う。
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