第1章

17/63
前へ
/63ページ
次へ
 ……移動は車だ。レンタカーを借りたのかもしれない。駅前に、短時間で借りられるものがあった。そこで、借りる。どこで返したのだ?  彼女は、高速に乗った。もう道の駅のレベルではない。顔が変わってゆく、もう彼女は彼女ではなくなっていた。姿はそのままに、中身が入れ替わったようであった。 「誰だ?」  いつ入れ替わったのか。巻き戻して、接触している人物を確認する。駅前で、誰かと話している。小さな物を渡された。そこで、彼女の表情が変わってゆく。そして、別人になった。 「物を渡されて、彼女は別人になりました」 「やはり、儀場の言う通りに、回収屋の仕業なのか」   車の外に出ると、自動販売機でコーヒーを購入する。 「しかし、言葉以外にも、能力があるのか。俺は、君の今知った事実を得るために、儀場に、処女も捧げたし、かなり抱かれたけどね」  俺は、コーヒーを吹き出してしまった。何を捧げたのだ。 「儀場の見返りは、体だったからね。しかも、儀場はほんの少しならば、過去を変えられる」  ほんの少ししか変えられないので、その少しで彼女が、今ここにいるという世界に変えたく、百舌鳥は何度も過去を検証してしまうのだそうだ。 「でも、彼女が今ここにいたとすると。百舌鳥さんの今は大きく変わるのではないですか」  百舌鳥は、彼女を知りたくて、会社を辞め、生葬社に入ったのではないのか。 「そうなんだよね・儀場の変える少しでは、彼女は帰って来られない。今、再び、出会うしかないのかもね」  彼女を探して、再び出会う。百舌鳥が遠い目をしていた。 「ところで、遊部君は童貞ではないだろうけど、処女だよね。儀場は、自分が処女を奪った相手の願いは、最後まで面倒をみると公言している」  どこが、処女だというのだ。しかし、思いつくのは、やはり尻だろうか。男に尻を使う予定は、今後も一切ない。 「しかし、遊部君は見た目と異なり、相手に全力で尽くしてしまうのだね。会ったばかりの俺に、能力を使うなんてね」  能力なんてたいしたものではない。 「俺は、出来ることが少ないですからね。できる事ならば、全力ですよ」  再び車に乗ると、実家に向かう。  実家は、小さな駅前を最後に店がなくなり、民家がほとんど無くなった先にある。葬儀場をナビで検索してみたが、付近には無かった。  車を止めて、弟の電話番号にかけてみると、なかなか繋がらない。
/63ページ

最初のコメントを投稿しよう!

90人が本棚に入れています
本棚に追加