第1章

32/63
88人が本棚に入れています
本棚に追加
/63ページ
 庭には花が多い、亭主はアウトドア用の車を好む。週末にはキャンプに行く、もしかしたら、釣りが趣味かもしれない。子供の自転車が、マウンテンバイクであった。  山に行く、川に行く。この家族の共通点は、アウトドア派だ。  夫婦の写真を見てみる。それが、どうもしっくりいかない。夫婦という感じがしないのだ。  子供の写真も比べてみる。 「何か分かりましたか?」  百舌鳥が、透明ボードの向かい側に立っていた。 「子供から親を推測したとします。すると、小田家の子供の顔は、小田家の母と、鈴木家の父ですね。同じく……」  子供の顔から、親の組み合わせが合っていないのだ。 「そうですね、失踪した子供の親から、この三組の家族は変だ。自分の息子は、何か秘密を知ってしまい、攫われたのではないかと、相談されました」  こんな変な相談は、探偵社にも断られたそうだ。 「俺も、この家族に会ってみましたが、言っていることが全て嘘で、掴みどころがないのですよ」  全て嘘の家族。嘘というのは、何かを隠すためのものだ。  机の上の資料を探してみる。設定だけで言えば、この親たちの高校時代、何か事件があった筈だ。それは、直接的には、このメンバーには関係がない。  地方誌の新聞記事を読んでみる。  そこには、大雨で遭難し、二人の高校生が行方不明、三人の大学生が亡くなったとあった。しかも、この二人の高校生の、在学していた学校が別々であった。 「ここが接点か……」  有名なキャンプ場で、この高校生たちは出会った。  何故、遭難したのか。この五人は、夜中の雨の中で、どこかに行ったのだ。  キャンプ場の付近の地図と、建物を透明ボードに貼る。遭難場所を、赤い磁石で並べてみると、見つかった三人は別の場所で発見されていた。でも、その中央付近には、地図には何もないが、航空写真には建物があった。 「廃墟だ……」  遭難であったが、二名の死因は溺死。雨で溺死であったのか。それに、バラバラに逃げたように散っている地点。一人は溺死ではなく、転落死でもあった。  その転落死というのも、崖から落ちたのではなく、木から落ちていた。 「何かに怯えて、逃げた」  情報を読みながら、状況を推測してみる。二人の高校生、女子。写真を見ると、かなり可愛い。  生き残っている者はいるのか。大学生は、男性が三人。女子高生も、本当は三名ではなかったのか。
/63ページ

最初のコメントを投稿しよう!