第1章

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 少年は、この白骨死体の経緯を知ってしまったのではないのか。そして、一緒にキャンプに来ていた家族を疑った。 「回収屋は、再生した記録を最新の回収機で回収するのだけど、根こそぎ持ってゆくからね。取られた方は、再生した記憶を失う」  再生した記憶を失うだけならいいが、その不安定な要素を、取られたほうは、幽霊やら異星人のせいだと補ってしまう。  回収屋は、異世界では金属での再生はうまくいかないせいで、生身の体験として記録し直している。記録をやり直した方が、高く引き取ってもらえるらしい。 「少年は、ここにはいない」  簡単に考えれば、行方不明になったのは、キャンプ場ではないのだ。 「まあ、インプラントを回収しましたから。採算は取れましたよ」  再び、車に乗り生葬社に帰ると、三時になっていた。昼飯もまだ食べていない。  生葬社の事務所に入ると、幾人かの女子社員がこちらを見ていた。 「お疲れ様です、百舌鳥店長。インプラント、処理します」  婦人警官のような制服を着ていた。 「白骨死体も処理しておいて」  三人の女性が、賑やかに処理をしていた。しかし、警官の制服に似ている。 「ああ、彼女達は警察から派遣されている」  やはり、ここは公務員であるのか。 「それと、遊部君の席は、ドアを入ってすぐのを使ってね」  空の机が用意されていた。 「少年を探してきます」 「大丈夫、それは、彼女達が保護したよ。脅されて逃げていたみたいだよ。死体が見つかれば、殺人事件だしね。警察の分野だから」 「はい!頑張ります!」  制服が似合っている。制服の胸が、かっこいいのだ。見惚れてしまうと、女性がひそひそとこっちを見ていた。 「……若い男性だから、警戒されているみたいね」  百舌鳥は笑いながら、店長室に戻ってしまった。 第六章 親友  少年の得た記憶によると、彼女たちはその部屋に閉じ込められたらしい。俺が行った時は、扉は開いていたが、元々は、錠で閉まっていた。  その後、警察やら地元の捜索隊が来て、周囲を捜索していたので、犯人は錠を外す事ができなかった。  女子高生二人は雨に濡れたままであったので、高熱を出し、そのまま肺炎になっていた。助けを求めることもなく、そのまま死んでしまった。 「大学生は事故死だろうね。でも、高校生二人は閉じ込めて殺してしまった。田中さんは殺人罪だろうかね、過失致死?かね」 
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