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「あの、成己のものですが、新品ですから使ってください。風呂も用意していますので、どうぞ」
風呂といっても、俺がいないと昴が眠ってしまうので、昴と一緒の風呂であった。風呂は広く、二人でも問題はないが、昴はふらふらで介助を必要としていたので、つい、面倒を見てしまう。
「昴、シャンプー」
「しかし、遊部さん、体もきれいですね。もう成己の恋人でもいいかと思ってきました」
何度も言うが、別に恋人ではない。俺がため息をつくと、昴が笑っていた。
昴が成己を思う気持ちはわかる。血が繋がっていなくても、一緒に育てば兄弟のような気持がわく。幸せになって欲しいものだ。
「俺も、自分の借りを返すために、生葬社でバイトをしますよ」
どうして昴が、生葬社を知っているのだろうか。問い質そうとすると、すっかりのぼせてしまっていた。
「あがります」
昴を抱えて風呂を出ると、車イスが用意されていた。良かった、ふらふらの昴を抱えて歩かなくて済む。
車イスに昴を乗せて、昴の部屋に向かうと、部屋には俺用の布団も敷かれていた。昴はベッドで、俺は床というのが、身分の差?を感じる。
ベッドに昴を降ろすと、敷かれていた布団に転がる。結構、疲れた。
「俺、回収屋のバイトをしていましたから、結構役に立つと思いますよ」
「回収屋?」
昴は、回収屋でバイトをしていたと言う。この丼池家は、各種の異物を所有していて、昔から回収屋に狙われていた。そこで、昴は回収屋に逆に近づいてみたのだそうだ。
「成己が生葬社でバイトを始めたのは、そんな俺のせいです」
回収屋は、結構、稼げる。
ドアをノックする音が聞こえると、丼池が部屋に入ってきた。
「水早さんに聞いてきました。昴は、完全に定着すれば、元通りに生活できるようです。でも、定着するまでは、時間を要し、より長く本人でいる事が大切とのことです」
長く本人でいることは分かったが、何故、俺のいる時だけ目覚めているのだろう。
「興味のあるものに、執着するので。俺の恋人がどんな人なのだろうで、意識を保っているのでは?」
他に興味を持って欲しい。
「昴君の彼女を探そうか?」
「ああ、最後に一緒にいたのは彼女ですが、今は興味ありません」
そもそも彼女、大物を狙う回収屋でもあったのだそうだ。昴へ近づいたのも、家に入る口実であったらしい。
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