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「俺が生葬社でバイトをすれば、遊部さんは生葬社で仕事をしていられるでしょう。名案」
昴が定着するまでだ。
「あの……遊部さん」
ドカドカと隣の部屋から、大きな物音がする。
「うちの両親が、勝手にアパートから荷物を運んできました。あのアパート、ウチの持ち物だったようで……」
「え???」
隣の部屋を覗くと、既に、俺のアパートの部屋が再現されていた。
金持ちの実行力は、半端なく凄い。いや、この実行力があるから、金持ちになれるのだろうか。
「……昴君が定着したら、引っ越していいよな?」
「そうですね。その時は、俺も手伝います。でも少しほっとしました。遊部さんを一人にしておくのは、心配でしたから。生葬社は、敵も多いし」
部屋は、アパートよりも広いが、居心地は悪い。ゲストルームであったのか、トイレとシャワーは部屋についていた。寝室も別にある。
「遊部さん、勝手に離れないでください」
昴が車いすで追いかけてきていた。
「成己、遊部さんは、儀場さんの儀式は受けていないのだろう?成己のように代理で済ませているのか?」
「昴?どうして知っている」
昴は、後ろをみて両親がいない事を確認した。
「俺、夢の共有能力があるのよ。儀場さんの見せる夢に共鳴しているしね」
夢は本人が覚えていないだけで、色々な脳の知識を整理しているらしい。それを、昴は共有する。
「遊部さんは、どちらでもない。でも、儀場さんは、遊部さんを大切にしているように思える」
手を出さないのが証拠だそうだ。
「それから、遊部さん、親から伝言で、家賃はいらないけど、昴のリハビリを頼むそうです」
いや、こういう場合は、きちんとお金の問題を最初に決めておいたほうがいい。
「家賃は払います」
そう告げに行こうとして、昴に腕を掴まれた。
「綾瀬さんが死んだのは、高校三年でしたか?」
唐突にどういう質問であるのか。高校三年の四月だったが、五月になった。しかし、綾瀬と過ごした……夏休みの記憶が蘇ってくる。
「そんなバカな……」
綾瀬は、高校三年の夏に生きていた。
「綾瀬さんは、貴方を奪いに来ます。成己の恋人にもさせたくない、儀場さんにも手を出させないためにです」
何の犠牲を払ってでも、綾瀬はここにやってくると、昴は言う。
「成己、遊部さんを死の世界に奪われるな。この人は、俺の恩人でもある」
過去を書き換えながら、綾瀬が近寄ってきていた。
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