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勘違いで、預けたのはこの空き地ではなく、付近のアパートではなかったのか。しかし、預けたのは、複数人、複数回であり、誤るということも考え難いのか。
空き地に座って、付近を見ていると、通りを歩いている人が幾人も見えた。駅前でもないのに、歩いている人が多いと思っていると、近くに公園があった。
子連れの家族が、公園まで歩いているのか。ベビーカーも多く感じた。
異国に来て、独りぼっちで、ボロいアパートに住み、働くだけの毎日で、この家族の光景は、自分の寂しさを加速させる。俺にも両親も兄弟もいるが、この容姿のせいで、敬遠されてきた。
自分も家族を持ち、家を持ち、こんな風に散歩をすること、そんな、普通の事が、遠い夢のようにも思える。今、ないもの、過去あったのかもしれないが、失ったもの。普通の光景に浮かぶと、とても辛い。
「存在しないアパート、いなくなった子供……」
あり得ないが、もしかして、子供は最初からいなかった。彼女達は、夢を見て、夢を共有することによって、現実と区別がつかなくなっているのではないのか。
「……帰るか」
あり得ない。もう一度、帰って考えてみよう。
空き地の写真を撮り、付近のアパートの景色も撮る。通りの人、公園、近くのカフェ。新旧の混じった街。
スクーターに乗り、生葬社に戻ってみると、彼女達は床に眠っていた。
「お帰り、遊部君。結論は出たかな?」
百舌鳥は、給湯室の中から出てきた。何故、給湯室の中にいたのだ。
百舌鳥の髪が、僅かに乱れていた。ふと給湯室の中を見ると、仕立てのいいスーツを着た男性が、手で唇を拭っていた。
男?!!
再度、百舌鳥を見ると、百舌鳥の服も乱れていた。
「……家に帰ります!」
変な世界に、首を突っ込みたくない。
第二章 彷徨って拾われる
一目散に扉に向かう俺の肩を、百舌鳥が掴んでいた。
「どうしたの?遊部君……」
百舌鳥から微かに漂う香水は、給油室からも漂ってきた。
「ひいい!」
百舌鳥の手を払い、外に飛び出してしまった。
世の中には、そういう世界があるということも、十分に承知している。けれど、目の前にあるというのは、別物であった。
走って自分のアパートの前まで来たが、息切れが終わると頭がすっきりしてきた。
「子供は最初からいなかった」
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