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「朱莉!ほーら、クツ脱いで」
「はーーーい」
「いま脱ごうとしてたんだよなー?朱莉は」
「優喜!甘やかさないでよ、もー」
相変わらずのはにかみ笑顔で
朱莉を抱っこする優喜。
「あ!けいきゅーん」
電車内のポスターを指さして
朱莉が叫んだ。
「朱莉もやっぱり好きなのねー、電車。」
「朱莉の場合は、電車よりもけいきゅんが好きなんじゃない?」
「かもねーw」
「ばぁば、ばぁば!」
朱莉が窓の外を指差しながら叫んだ。
「はいはい、もう着くからね、ばぁばのお家。朱莉ったら、分かるのね。実家が近づいてること。」
「朱莉は賢いもんなー?
お義母さん、また新しいおもちゃ買って、楽しみに待ってくれてるみたいだな。」
「そうだよー!もー。あんまりあげすぎないでって言ってるのにー!」
朱莉の頭を撫でながら
窓の外に目をやると
あの頃と変わらない懐かしい風景と
私たちの知らない新しい風景が
お互いを尊重し合うように調和し
広がっている。
「少しずつ変わっていくんだね、横須賀中央駅も。」
「そうだなー…。でも朱莉にとっては、今の横須賀中央駅が全てなんだよな、きっと。将来、あの頃の駅が懐かしいな、なんて、今日の景色を思い出すのかもしれないよ。」
「そうだね…。」
少しずつ変化していく。
駅も
私たちも。
「オレたちにとって、横須賀中央駅だけじゃなく、今住んでる横浜駅が大切な場所になったように、朱莉もきっと、もっともっと大切な場所や大切なものが増えていくんだろうな。」
「大切な、もの…。」
変化していくことが
少し寂しくはあるけれど
同時に
どう変わっていくんだろう?と、楽しみな気持ちもある。
「大切なものが増えていくって、すごく幸せなことだよね…。」
お父さん。
見てくれてる?
お父さんがくれた
幸せのバトン
私も
つないでいくからね。
未来へ――――
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