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「お父さんとの思い出って言えば、小さい頃、お父さんが好きだった京急電車をよく一緒に見に行ったことかな?踏切前で、真っ赤な電車が間近を走っていく様を、2人で飽きもせず何時間も見てたね。
私が電車好きなのも、お父さんの影響なんだろうな。縁あって、京急電車で結婚式を挙げれたこと、お父さんはきっと喜んでくれるかな?」
お母さんの手の中にいる
はにかんだ笑顔のお父さんを
まっすぐ見ながら、続けた。
「お父さん、本当に、本当に、ありがとう。もっともっと生きている間に伝えたいこと、たくさんあったのに…。照れくさくて、なかなか言えなくてごめんね。
シャイなところは、お父さんに似たのかもね。
ワガママで自分勝手な娘だけど、どうか、これからも見守っててね…。」
お母さんへの手紙も用意していたのだけれど
涙で、言葉が出てこない。
「お…かあ、さ…」
優喜が拭ってくれても、拭ってくれても
涙があふれてくる。
声がつまって、うまく話せない…。
私がお母さんへの手紙を前に
嗚咽を漏らしていると
「…綾乃。」
いつの間にかマイクを手にしていたお母さんが
私に
語りかけた。
「今日はね、私も手紙を預かっているの。
先に読んでも、いい?」
!
手紙、って
え?誰から…
プログラムにない展開に
戸惑いを隠せない私に
構うことなくお母さんは続けた。
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