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「お父さん。優しくて一生懸命で、でもちょっと不器用だったお父さん。
3年前の、ちょうど今日。病気でこの世を去ってしまった時、本当に悲しくて悲しくて…。何カ月も泣き続けていました。
まだまだこれから親孝行、たくさんしたかったのに。ウエディングドレス姿、見て欲しかったのに…。
たくさんもらった愛情も優しさも、私はまだ全然かえせてなかったよ。でもお父さん、言ってくれたよね。「もうじゅうぶん、かえしてもらってるよ」って。「足りないって思うなら、もっともっと幸せになりなさい。綾乃が幸せになることが、お父さんの幸せだから」って…。
ありがとう。本当に、ありがとう。私、ぜったい幸せになるからね。ずっとずっと見守っててね…。」
会場の至る所から
すすり泣く声が聞こえる。
「小さい頃は、私が起きている時間に家に帰って来ることはほとんどなくて、私は休日に『おとうさん』という名前の人が遊びに来てるんだと思っていました。私は覚えていないんだけど、「『おとうさん』のお家はどこ?帰らなくて大丈夫?」なんて無邪気に言っていたんだと、お母さんから聞きました。お父さんが私たちのために一生懸命働いてくれていたからこそ、今の私がいるのにね。ヒドイこと言って、本当にごめんなさい。
中学生の時に、お母さんが風邪で寝込んで、お父さんがカレーを作ってくれたことがあったよね。お父さんが慣れない手つきで一生懸命作ってくれたカレ―だったのに、反抗期だった私は「お父さんが作ったのー?おいしくなさそう。お母さんのがいい。いらなーい!」なんて、冗談半分に言ってしまったよね。
その時のお父さんの本当に悲しそうな顔、今でも忘れることができません。
結局一人でカレーを食べていたお父さんの背中に、何度も謝ろうとしたのに、結局できなかった。どうしてあのこと、一度もきちんと謝れなかったんだろうって、今でもすごく後悔しています。
本当に、ごめんなさい。お父さんが作ったカレー、本当はすごく食べたかったよ。おいしくはないかもしれないけど、きっとめちゃくちゃ優しい味がしたんだろうな。」
マイクを持つ優喜の手も
ずっと小刻みに震えている。
私の瞳からも
次から次に
涙が
とめどなく溢れ出てくる。
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