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「綾乃へ。
この手紙が読まれている頃には、私はこの世にいないかもしれない。
何年後だろう?10年後?20年後?5年以内ならお前、たいしたもんだよ。いい男、つかまえたんだな。」
!!!
お と う さ ん ?
「綾乃の結婚式で読んでほしいと、お母さんに渡しておこうと思ってな。
ドレス姿、見れないのは残念だったけど。親バカなこと言わせてもらうと、きっとめちゃくちゃキレイなんだろうな。顔見て直接はこんなこと言えないけど。手紙だし、いいだろ。」
お父さん…!
涙が崩壊したダムのように
とどまることなく流れてくる。
「小さい頃は仕事ばっかで、かまってやれなくてごめんな。それからカレーのこと、綾乃があの後えらく気にしてたと、母さんから聞いたよ。気にすんな。食ってみたけど、笑えるくらいマズかったから。食わなくて正解だったよ、本当!」
不器用なお父さんの
せいいっぱいの優しさ。
私が気にしないように
冗談で笑い飛ばそうとしてくれる。
「綾乃とはよく一緒に、電車見に行ったよな。覚えてるか?赤い電車が通過するたび、お前、キャーキャー言ってたんだぞ。」
お父さんも、覚えてくれてたんだね。
覚えてるよ、当たり前じゃない…。
「綾乃、幸せになるんだぞ。ちゃんとお前が幸せか、遠くから見守ってるからな。
それから、新郎さん。綾乃を、よろしくお願いします。意地っ張りで素直じゃないとこもあるけど、本当はめちゃくちゃ気の優しい、いい子なんです。私にとっては誰よりも可愛い、自慢の娘なんです。
幸せに、してやってください。 父より。」
さっきまで、震えいていた優喜の手は
ピタッと止まっていた。
お父さんの写真に向かってシャンと背を伸ばし
まっすぐな瞳で
「はい。必ず幸せにします。」
1ミリの躊躇もなく
ハッキリした口調で
そう言った。
あぁ、だからやっぱり私はこの人なのだと。
「幸せになる」というお父さんとの約束を
この人となら守れると。
改めて確信した。
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