ブライダル・ウィング号

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「綾乃、優喜さんに感謝しなさいね。 綾乃がお父さんに結婚式見せてあげられなかったこと、後悔してるって知って、こっそり私に、相談に来てくれたの。」 「え!?」 何それ、初耳…! 優喜は、気まずそうに横を向き 私と目を合わせようとしない。 「お父さんと綾乃の、思い出の場所や思い出のもの。何か2人にとって、大切にしていることがあれば教えてくれって。 自分はお父さんに会ったこともないし、何ができるわけでもないけど、少しでも綾乃とお父さんの喜ぶ式にしたいんだ、って。 それでいくつかお父さんと綾乃の思い出話をしてね。きっと忙しい中たくさん調べてくれたんだと思うわよ。『京急電車』で結婚式を挙げるプランを見つけてきてくれたの。」 「!!!」 知らなかった…。 それであんなに、京急電車にこだわってたの? 私の、ため。 お父さんの、ため…? 「優喜…!」 ハンカチを持つ優喜の手を 強く握った。 「バカ…。そんなの、言ってくれなきゃ分かんないよ…! 私のためだったの?私のために、ぜんぶ…!」 「綾乃のため、っていうか…。綾乃が喜んでくれたら、オレも嬉しいから。結局は…オレのため?」 気を使わせない軽口。 こんなところ、お父さんにちょっと 似てる。 私は なんて幸せものなんだろう。 不器用で優しい、お父さんの愛に包まれて おしゃべりでお調子者 でも本当は誰よりも人の気持ちに敏感な、お母さんに背中を押されて そして どこまでもまっすぐで優しくて こんな私を愛して受け止めてくれる 最高のパートナーがいて。 私の幸せを 祝ってくれる 親族や友人が こんなにたくさんいて…。 こんなにたくさんの愛に包まれて お父さん わたし 本当に幸せだよ。 ワガママで意地っ張りで まだまだ未熟な私だけど 少しでも 少しずつでも みんなに返していけるよう 感謝の気持ちを忘れないよう 優喜といっしょに 歩いて行くからね。 お父さんからもらった大きな愛を 未来へ 未来へ つなげられるように―――
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