2人が本棚に入れています
本棚に追加
だが、開いてるお店は遠目から見てもモノが散乱しているのだ。まるで、何かに急に人がいなくなったみたいに。もし、この街が人が逃げ去った後の場所だというなら、私もヤバいのでは無いだろうか。アメリカンな映画みたいに、夜しか活動できないゾンビが生まれるウイルスが散布されたとか。もしそうだとしたら・・・
「そんな事は無いよ!」
「へっ!?」
私は突然の後ろからの声に、ほぼ反射的に振り返る。
「ぅばあぁ!!!」
「キャァッ!!」
私はその奇声と一瞬で近づいてきた顔に驚き、体のバランスを崩す。そして、雑貨が散乱した床に思い切りシリモチを突いた。
「うっ!・・・いったぁ~!」
「あはは、驚いた!驚いた!」
一体何なのだ。そう思いながら私は見上げる。すると、そこには西欧風の古そうな人形が立っていた。青い帽子を被り、目は茶色のボタンが縫い付けられている。また、青い木こりの様な服装をしており、足は左側だけ無い。多分だが、そこの部分はちぎれたらしく、白いモコモコした毛綿がチョロリと出ている。
「あ、あなた・・・人形?人形が喋った??」
「あはは、人形が喋るのが珍しいの?」
人形には表情は無かった。正確には、笑った顔をしている。しかし、表情に変化が無いのだ。口元は絵具か何かで描かれており、動く方がおかしい。しかし、何とも言い難い奇妙さが人形の周りに霧の様に漂っている。
「そりゃあ・・・普通は人形は喋らないわよ・・・!あなた何者なの?」
「僕?僕の名前はピコって言うんだ!」
「・・・ふーん、それで?私をどこかに連れ去ろうって気?」
私は出来るだけピコが怯える事を願って、慣れない睨みをきかせる。しかし、ピコの表情は変わらないので怯えているのかどうか判別出来なかった。ピコは左右に軽く揺れる動作を取りながら、私の事をジッと見ている。・・・怒らせたのだろうか?
「安心して、僕は君を助けに来たんだよ!」
「・・・へ?」
私は虚を突かれ、ポカンとしてしまう。多分、今の私の顔はまさしく鳩が豆鉄砲を食らったかのような顔をしていただろう。
「助けに来たって・・・それって、この街に人が居ない事と関係があるの?」
「もちろんだよ!街に悪い奴が現れてから、街の皆全員は隣の町に避難しちゃったんだ!」
「悪い奴?」
「うん!とっても怖い奴なんだよ?」
最初のコメントを投稿しよう!