第1話 you are (not) trapped

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 そうか・・・やっぱり、ここは他人がいる世界だったのか。けれど、ピコの言い分を聞く限りだと、ここは元のあちらの世界では無いらしい。そこには少しだけ安心した。もし、知り合いに会うなんてことは・・・嫌だから。 「そう・・・じゃあ、ピコは私をその隣の町にまで連れて行ってくれるの?」 「勿論さ!僕はその為に来たんだよ!」  ピコはそう言うと、振り返って店の外に出る。片足でウサギのようにピョコピョコと跳ねながら移動する姿は、少し可愛らしかった。 「僕についてきて!案内するよ!」  私は近くに落ちている安そうなヘアゴムを拾い、髪を後ろで一つに縛る。昔から母の言いつけで、髪はどんなに邪魔でも伸ばしていた。それは母が亡くなってからも、死ぬまで続けていた。 「よし、いこっかな」  髪を後ろで縛ってポニーテールにすると、私も立ち上がる。そして、ピコの後ろ姿を追いかけるように店から出て行った。まあ、少しくらいの万引きもバレル事は無いだろう。あれだけ荒れていれば・・・大丈夫な筈だ。 「ねえ、ピコ」 「なーに?」  ピコはピョコピョコ跳ね進みながらも、流暢な返事を返してくる。 「さっき言ってた悪い奴って・・・一体どんな奴なの?」  悪い奴と言うからには、何かこう悪そうな雰囲気は出ているだろう。しかし、隣の町に移動する前に出くわしては元も子も無い。だから、少しだけでも特徴が知りたかった。 「あー、どんな奴かー。うーん・・・とにかく悪い奴だよ!」 「・・・いや、そうじゃなくてさ。その悪い奴の特徴とか」 「・・・うーん、仮面を被ってる奴かな。それでいて、皆にすっごく酷い事をするんだ!」 「へー、そうなんだ」  いや、ほとんど分からない。分かったのが、仮面を被っているという事だけじゃないか。まあ、普通はそんな人いないから、すぐに分かるだろうし良いか。  それにしても、初見だと分からなかったが、ここは随分と荒廃している場所が多い。電柱の電線は切れている場所が多かったり、家が赤く錆付いてたりと様々な老朽化が進んでいる。一体どれぐらいこの街から人は離れていたのだろうか。  あれ?そういえば・・・ 「ピコ、君はどうやって動いているの?」 「僕は魔法で動いているよ!知らないの?」 「えっ!魔法?」  随分と予想外な答えが返ってきた事に驚く。そうか、この世界は魔法の世界なのか。
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