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そうか・・・やっぱり、ここは他人がいる世界だったのか。けれど、ピコの言い分を聞く限りだと、ここは元のあちらの世界では無いらしい。そこには少しだけ安心した。もし、知り合いに会うなんてことは・・・嫌だから。
「そう・・・じゃあ、ピコは私をその隣の町にまで連れて行ってくれるの?」
「勿論さ!僕はその為に来たんだよ!」
ピコはそう言うと、振り返って店の外に出る。片足でウサギのようにピョコピョコと跳ねながら移動する姿は、少し可愛らしかった。
「僕についてきて!案内するよ!」
私は近くに落ちている安そうなヘアゴムを拾い、髪を後ろで一つに縛る。昔から母の言いつけで、髪はどんなに邪魔でも伸ばしていた。それは母が亡くなってからも、死ぬまで続けていた。
「よし、いこっかな」
髪を後ろで縛ってポニーテールにすると、私も立ち上がる。そして、ピコの後ろ姿を追いかけるように店から出て行った。まあ、少しくらいの万引きもバレル事は無いだろう。あれだけ荒れていれば・・・大丈夫な筈だ。
「ねえ、ピコ」
「なーに?」
ピコはピョコピョコ跳ね進みながらも、流暢な返事を返してくる。
「さっき言ってた悪い奴って・・・一体どんな奴なの?」
悪い奴と言うからには、何かこう悪そうな雰囲気は出ているだろう。しかし、隣の町に移動する前に出くわしては元も子も無い。だから、少しだけでも特徴が知りたかった。
「あー、どんな奴かー。うーん・・・とにかく悪い奴だよ!」
「・・・いや、そうじゃなくてさ。その悪い奴の特徴とか」
「・・・うーん、仮面を被ってる奴かな。それでいて、皆にすっごく酷い事をするんだ!」
「へー、そうなんだ」
いや、ほとんど分からない。分かったのが、仮面を被っているという事だけじゃないか。まあ、普通はそんな人いないから、すぐに分かるだろうし良いか。
それにしても、初見だと分からなかったが、ここは随分と荒廃している場所が多い。電柱の電線は切れている場所が多かったり、家が赤く錆付いてたりと様々な老朽化が進んでいる。一体どれぐらいこの街から人は離れていたのだろうか。
あれ?そういえば・・・
「ピコ、君はどうやって動いているの?」
「僕は魔法で動いているよ!知らないの?」
「えっ!魔法?」
随分と予想外な答えが返ってきた事に驚く。そうか、この世界は魔法の世界なのか。
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