プロローグ 創生の楔

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 自分とは、世界に一人しか居ない存在の我が存在の事を示す2文字だ。しかし、それを証明する方法があるのかという疑問は私を何時も追い詰める。これは王たる吾輩でさえも狩り殺す最悪手の楔だ。その昔、これを打ち付けた奴には恨んでも恨み切れぬ。  さて、其れとは別にだが、この楔を解く鍵を見つけたい所だ。少なくとも、今の吾輩にはこの次元の王である。出来ぬ事と言えば、奴をもう一度殺害する事では無かろうか。いや、これは出来ぬではなく行わないが正しかろう。今の吾輩には100の境界線と無数の材料がある。  まず、1つの世界の境界線上に1種の劣化知的生命体を作る。吾輩の指の一部を刈り取り、私の血から器を創世する。そして、別の世界境界戦軸で楽しまれている絵画の中から一部を入手し、形を決める。うむ、この五芒星に似た細長い形が良いだろう。形が決まったので、早速捏ね繰り回し、童心に還りつつも完成させる。ふむ、少し奇妙だがまあ良いだろう。争いが起きるように、2つ作り、それが時々交わらなければ滅ぶように一部を片方に多めに付ける。  次に、吾輩の魂の一部を形の出来上がった2つに貸す。すると、それらは動き出し、吾輩に膝まづく。我ながら、随分と良く出来たものだ。だが、少々出来すぎかもしれぬと思い、片方の脳から一部の器官を引っこ抜いた。それはバタリと倒れるが、すぐにまた起き上がる。死を感じさせると面倒である為、吾輩が治したのだ。 「お前たち、よくぞ生まれてきた」 呟くように、私はそれらに告げる。すると、2つは顔を上げ、私に向かって言う。 「主よ、私達を産んでくださった事、感謝を申し上げます」 「また、敬服いたします。何なりとご命令を」 「・・・」 やはり少し出来過ぎたらしい。まあ、少し差があろうと問題は無い。 「お前たちは、これから幾億の時間が与えられる。しかし、ただ生きるだけというのも辛かろう・・・」 2つは神妙な目で、私を見つめる。やはり、従僕な存在と言うのは気持ちが良い。私は言葉を続けて吐く。 「そこで、お前たちにはある1つの目的を与えよう。そして、ある10の規則を宝とせよ」 「はい」 2つは自然かつ流暢に頭を下げる。 「お前達の目的は『存在の証明』を発見し、吾輩に差し出せ。それを証明する為なら、世界の何を利用しても構わぬ。その目的を私に差し出す為のみに、お前達を産んだ」
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