2人が本棚に入れています
本棚に追加
あの世界なんかよりも幸せな場所を見つけられたと思ったのだ。彼女はただただ、自分を包んで欲しかったのだから。
その後は、ゆっくりゆっくりと存在していた。流れているのか留まっているのかも分からない。ただここにいると気持ちが良い。ずっとここに居たい。溶けていたい。そんな感情が彼女を支配する。夢と現実の終わりだった。
ーー○ーー
私は死んだ。もう湯船の中には死体となった私の姿があるだろう。時間がどれほど立ったのかは分からないけれど、多分そう思った。
つまらない人生だった。もし今目の前に神様が現れて、私に何故自殺したのかと問われたとしよう。絶対に私は「つまらない、下らないモノだったからだ」と答える自信がある。まあ、そもそも神様とか地獄の閻魔様なんて信じて無いんだけど。
死んだはずなのに、下らない事が頭に浮かぶようだ。しかし、体全体が・・・いや、意識全体が何かに包まれているような気がする。それは心地良いノンビリとした感触で、毛布に包まれる猫になったような気分だ。
不思議だ。何で私は生きていたんだろう。今までずっと苦しい思いをしても、どんなに辛い思いをしても、周りは皆生きろと言っていた。でも、こんなに簡単で、幸せな気持ちになれるんじゃないか。誰もがこの感覚を知らないで、知ったかぶって死ぬことはいけない事だと言っていたのか。そう考えると、私は少し腹がたった。
ずっと・・・ずっと、何かに引っ張られているような気がする。ハッキリとは分からないが、勘がそう言ってる・・・気がする。もしかすると地獄の鬼かもしれない。または、とってもイケメンの天使なのかもしれない。どちらが良いかと言われれば・・・天使が良いな。鬼は凄くムキムキの筋肉達磨のイメージがあるし、パンツ一丁の男なんて当分は見たくない。
「あれ?」
そんな事を考えていたら異変に気が付いた。視界が戻っているのか
、周り全体が真っ青だった。先程までは、そんなものすら無かったのに。さらに可笑しいと思う事がある。私の髪の毛らしきものが視界にチョロチョロ入ってくるのだ。まるで、投げ捨てられ、そのまま落下している海藻の様だ。
「あ、あれ?あれれ??」
最初のコメントを投稿しよう!