第一章 ある日の朝

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 自分も家族を持ち、家を持ち、こんな風に散歩をすること、 そんな、普通の事が、遠い夢のようにも思える。 今、ないもの、 過去あったのかもしれないが、失ったもの。 普通の光景に浮かぶと、とても辛い。 「存在しないアパート、いなくなった子供……」  あり得ないが、もしかして、子供は最初からいなかった。 彼女達は、夢を見て、夢を共有することによって、 現実と区別がつかなくなっているのではないのか。 「……帰るか」  あり得ない。 もう一度、帰って考えてみよう。  空き地の写真を撮り、付近のアパートの景色も撮る。 通りの人、公園、近くのカフェ。新旧の混じった街。
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