第1章

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春は、三浦の山々が山桜で白くみえ線路わきの河津桜の赤が色鮮やかに、車内の乗客はまだ化粧慣れしていないような初々しさの残る新人OLやサイズの大きい制服の学生の姿。 夏になるとハンカチで頭の汗を拭きふき乗ってくる太ちょのサラリーマンやうっすらと透けるほどの服のOLさん、真っ黒に日焼けをした学生たち。 秋には大きな荷物を持ったオバタリアンの集団、乗り込むや空いてる席にまっしぐらに、座ったかと思えば大きな声で会話して大笑いをし降りるまで喋りっぱなしの大騒ぎ。どこかの観光旅行に行くのでしょうね? そして冬になり駅に着くたび木枯らしが吹きこみしがみっつらの寒がりさん。 毎日、三崎口駅から東銀座までよく通ってきたと思います。 私が入社した当時は乗り降りがありあまり車内で座れなかったり、ましてや居眠りなどは出来なかった。 このころの楽しみといえば吊革につかまり外の景色を眺めながら、隣で揺られているOLのほんのり香る洗い髪の匂いを嗅ぎながら「おはようございます。よくお会いしますね?」なんて声を掛けられたらどう返事をすればいいのかなんて一人でにやにや考えて、電車だトンネルに入った瞬間窓に映った自分の顔を見て、即座にそのOLに背を向けたり。そのとたん反対のつり革にぶら下がっている汗臭いオヤジの顔に触れそうになったことを思い出した。 こんな日に限って会社でしくじることが多かった。
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