第1章

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第1章

「はぁ、アイス食べたかったな・・・」 そう呟いて澤井美加子はベッドに起き上がった。 最近よく食べ物の夢を見る。 ハンバーグだったり麻婆豆腐だったりおにぎりだったりするのだが きまって口にいれようとすると目が覚めるのだ。 そう、今日はわたしの大好きなハーゲンダッツのバニラだったというのに またしても食べられずに目が覚めた。 こういう夢って分析したら何かあるのかなと考えながら、ベッドから出る。 きっと何かあってもろく結果じゃないな。 時計の針は8時少し前をさしている。 目覚ましが鳴る前にまた起きてしまった。 顔を洗って、着る服を考えている間にコーヒーを入れる。 美加子は来月で30になる。 もともとヒラヒラしたスカートやヒールのついた靴などは身に着ける習慣がない。 でもここ数年の友人の結婚出産ラッシュにくらべて、 自分の恋愛から遥かに遠ざかっている生活が 少し気になりだしたので いつものジーンズをタイトな女性らしいラインのものにしてみたり、 着心地重視の綿のシャツをシフォン素材のものにしてみたりと まずは見た目を変えてみることにした。 まぁ、恋愛から遠ざかっているのは服のせいだけじゃないんだろうけど。 選んだ服に着替え、コーヒーを飲みながら軽く化粧をする。 仕事場の本屋までは電車で10分。 家を出て駅に向かう。 美加子が住んでいる駅はJRの東神奈川駅。 神奈川県民なら大体知っている駅で 京浜東北線と横浜線が止まるまあまあ大きい駅だ。 横浜駅のとなりだが、 あまり横浜らしさは感じられない。 美加子はJR東神奈川駅の改札を通り抜けて、陸橋をまっすぐ進んだ。 100メートルほどいくと、京急線の改札がみえてくる。 すぐ近くにあるのだが私鉄の線なので駅名が違う。 美加子は京急線の仲木戸駅の改札を通って、すぐ目の前にあるホームで電車を待った。 向かい側のホームに京急独特の赤い車両がとまっている。 かなり混んでいるようだ。 品川や川崎方面から横浜へ向かう人が多いせいだろう。 美加子の待っているホームにも電車がきたが、全員座れるぐらいだ。 10分ほど乗ったところの生麦駅で降りる。 ここは工場もいくつかあるので降りる人は多いのだが美加子の出勤時間だともう人もまばらだ。
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