第1章

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「いえそんな・・・わたしのほうこそ」 「え?」 「わたしのほうこそ、いいのかなって。りょ、亮介さんみたいな方に誘っていただいて」 美加子が言うと、彼は少しの間だまって、美加子のことをじっと見た。ますます赤面していくのがわかる。 「僕みたいな・・・そっか。そんな風に言ってもらえてうれしいけど・・・」 彼が何か言いよどむ。 そのとき注文していたグラスワインが運ばれてきた。 そのまま2人はまた乾杯し、料理を食べた。 彼は美加子のことを色々と聞いてきてくれて、美加子はそれに答えた。 嘘みたいな話だけど、彼はずっと書店で働く美加子のことが気になっていたらしく 印象づけるためにわざわざ本を予約したり、取り寄せしたりしていたそうだ。 ・・・その作戦は大成功で、美加子はもうどうしようもなくうっとりとした気分で横浜のデザイン事務所で働く彼の仕事の話を聞いていた。 「そう、それで今度京急線の油壷マリンパークの仕事をすることになったから、一度行ってみようかと思ってて。 美加子ちゃん行ったことある?」 「行ったことないです・・でもよく友達がデートで行ったとかは聞きますよ」 そう答えたあと、しまった・・と思った。これじゃ誘ってほしいと催促したみたい。 「すごくかわいいって・・ペンギンが!」 フォローしようとしたが言葉がでず、よくわからないことを言ってしまった。 「美加子ちゃんペンギン好きなの?」 「あ、はい・・そうですね。どちらかといえば」 またモゴモゴと下を向いた美加子を見て彼がくっくっと笑っている声が聞こえた。 「行ってくれる?」 「え・・」 「油壷マリンパーク。僕と一緒に。ぜひお願いします。次のお休みはいつですか?」 いきなりふざけたかんじで彼が言ってきて、 美加子は思わず笑った。 その後も彼がリードして色々話題を振ってくれて、あっという間に時間が過ぎた。 彼が時計を見ながら言った。 「もうこんな時間か。美加子ちゃん、家は京急線?」 「あ、どっちでもいいんです。JRで東神奈川でも仲木戸でも。」 本当はJRのほうが断然家には近い。 でも、京急線に乗れば彼と途中まで一緒に帰れる。 美加子が帰り支度をしている間、いつのまにか会計もすんでいた。 「じゃあ、京急で途中まで一緒に帰ってくれる?」 彼が聞いてきた。
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