第1章

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 遠くで車輪がレールを通過する音が聞こえる。春からは横浜方面へ向かう電車に乗り、もうあの車両の魔法にかかることもない。何より、晴夏とはもう一緒に登校できないのだ。                      「なっちゃん目が真っ赤よ。うるうるして、花粉症?」 「笑いすぎて涙が出ただけ。卒業式の時期になって花が咲いたらきっと花粉もこれでもかてほど吹き出ててわんわん泣くわよ」  晴夏は苦笑いを浮かべて何気なく私の髪に触れる。  細い指先が髪の毛を梳き、くすぐったい。私は気が抜けて晴夏の肩に頭をあずけた。  
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