快楽部実態調査

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「なーなー。そのヒトもしかして、噂の快楽部なん?」  唐突に、近くでかたまりを作っていたクラスの男子が話しかけてきた。  校則なんてなんのその、といった具合にハデな髪を逆立てた数人のグループだ。髪色といいピアスを始めとしたアクセサリーで個性を出しているはずが、全体を見れば誰もが同じような印象になっている。薄目で見ると区別がつかない。  大体ひとクラスにひとつ、こうしたグループがあるものだと思う。クラスという小さな分母の中で相対的に「俺ってイケてる」と自己暗示にかかった何人かが集まることで形成されるグループだ。集団における習性のようなものだろうから、自分がこうならなくてよかったとほっとする。 「なーって、聞いてんだろ。もしかして先輩?」  九重米は彼らを相手にしなかった。前髪の隙間からただ一度、「用事は済んだからサヨナラ」と意思を伝える視線で一瞥くれて、それだけだった。  徹底的に無視して教室を出ていく後ろ姿は毅然としてカッコよくすらある。  だが出入り口で入ってこようとした女子生徒とすれ違い際、片手を上げて挨拶をした。  それがよくなかった。
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