快楽部実態調査

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「なんだよ、なにもしてねーよ。してもらおうとしてたところだったんだよ。ついでにアンタにも頼もうかな」 「部活動は放課後。興味があるなら旧校舎まで来ればいい。周りに嫌な思いさせて、それでヘラヘラ楽しんでるような連中の来ていいところじゃないんだけど、来る者は拒まないのが部長の方針だから」  部活動は放課後。正論だ。だがその正しさに誰もが共感するというと、期待はできない。なにしろ非常識な態度と非常識な用件を持ちかけるやからが相手だ。 「ンなこといーからさあ!」  ゲス共のひとりが大声を出して机を叩く。教室は静まり返って、気にしないようにしていたクラスメイトの視線が集まった。厄介者を見る目だというのにどう解釈したのか、当人たちは注目を浴びて気分が良さそうにしている。 「お前らも噂は知ってンだろ? こいつらがどういうことしてるか。集まって気持ちイーコトしてるような痴女が、マトモなこと堂々と反論してるんじゃねーよなあ? だろ?」  この場の何人かくらいは快楽部が噂通りではないと知っているはずだ。だが多数派にはならない。それをわかったうえで大方の同意を得て雰囲気で押し切ろうとする、不誠実で卑怯なやり方だ。  これ以上黙って見てはいられなくなった。 「快楽部は期待してるような部活動とは、全然違うよ」  意識して笑顔を浮かべて、前へ進み出る。  暴れたり喚いたりする気にはならなかった。九重米が逃げも怒りもしなかったことに敬意を評したい。 「なんだよ草可、お前だってコイツらの噂聞いてンだろ? まったく怪しくないならそういう噂なんか流れるワケねーんだ」 「だから生徒会の監査が入ってる。もし問題があれば、そっちで改善なり解散なりさせるさ」 「問題ねーワケねーじゃん!」 「それを判断する権限は生徒会にある。君たちが今ここで彼女たちを侮辱するのは間違いだ」  理屈が通じているかは疑わしい。しかし教室の雰囲気が変わっていることには気がついているはずだ。彼らを見る目は厳しく、俺には尊敬の眼差し。ひさしぶりに会心の優等生ぶりを発揮できて満足だ。  あとは落としどころを用意しなくてはならない。いくらこのクズどもの人間的な価値がゼロでも、自己評価額はそうではないから体面を保護してやる必要がある。
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