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しかしながら「そんなバカな」という気持ちも残っている。
「そんなバカな。フザけるな」
その想いを確かなものにするため、強い言葉で口に出した。あんな部に理解を示すなんて、あってはならない。
キョトンとする九重米の目を覗き込んで睨む。
「キサマのような快楽部の課長がただ俺に癒しグッズを渡すためだけに現れるか? しかもちょっとしたトラブルで好感度を上げていくなんて出来すぎている。おかしい」
「はぁ? なに言ってんの。好感度を上げたのはボクじゃなくてキミだろ」
「黙れ。どうせまた何か気持ち良いことを企んでいるくせに。ええい、いつまで手を握っている。離せ気色悪い」
振り払うと、魂胆を見抜かれた九重米はショックで逆上した。ざまあみろだが、そんなことで喜んではいられない。
「俺の前に現れたのは陽動、他へ注意を向けさせないためだとしたら......? 部活やってる連中は意味もなく部室に集まったりするもんだよな。例えば今みたいな昼休みに」
九重米の怒りのみだった顔色が焦りで軋む。
「その反応、確認せずにはいられないな」
快楽部は旧校舎、一旦外へ出る。下足室へと駆け出すと、後ろで九重米が騒いだ。
「ちょっと待った! 確かに昼休みは部室使ってるけど、キミが期待してるようなやつはないから!」
これは気になる発言。なので戻って九重米を小脇に抱えてから再び快楽部を目指した。
「わっ! なんだ急に」
「言いたいことを言え。聞いたら捨てていく」
「キミもうちょっと女の子への接しかたを考えないか? 悲しくなる!」
「触った限りで言えばお前に女の子らしい部分はない」
「むっか、ボクはこれでも”B”はあるんだからな!」
「それは女の子が晒していい情報なのか」
「キミにはボクのことちゃんと知ってもらいたいの!」
話すだけ不毛なようだ。特に問題にならない軽さなのでこのまま到着するまで運んでもいい。動かぬ証拠を掴んだらその場で罵倒してやりたい気持ちもある。
「まったく、どう言えばキミに通じるのかな......。そうだ! これって優等生らしい振る舞いか、考えてみてよ」
「......なるほど、それは無視できない。良い指摘だ」
では行動を省みて解放する、とはいかない。
脇へ抱える形から一度持ち上げて肩に担ぎ、腕の間を滑らせて仰向けに抱きかかえる。いわゆるお姫様だっこだ。紳士的な運搬方法にこれ以上はきっとない。
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