0人が本棚に入れています
本棚に追加
「気をつけ、礼」
「「ありとぉしたぁー」」
大勢の生徒がカバンを手にする
先生は日誌や書類をまとめつつ訪ねてくる生徒を待つ。
「ラーメン食い行こうぜー」
「今日一緒に帰ろー」
「塾だー」
そこらじゅうから飛び交う。
窓からは赤い京急線が走ってるのが見える。
高校三年の秋いや冬かも 風が少し凍え始めている。
きっとこれは
よくありふれた放課後の光景であろう。
談笑や真面目な進路相談をする彼らに一番に背を向け僕は教室を出る。
別に急ぐ用事はない。だがここにいる意味も特にない。
僕は一人で帰りたいのだ。
並ぶ教室の前をすこし気を向けながら通り過ぎていく、何人かの同級生は声をかけてくる。
「帰んの?じゃあね!」「今日暇??」「一緒に帰ろうぜ」それらの言葉を軽く受け止めて、返して、流して、かわして、余計なものを持ち合わせることなく切り抜ける。
階段を降りて無事昇降口にたどり着く。
前方には額縁に入りきらない木々、青い空が広がる。
靴を履き替えてその額縁を通り抜ける。
空 木 建物 360度囲まれた絵の中
ドーナツのような人たちの輪の真ん中
ポケットから出したイヤホンとiPodが出発の合図
その額縁ドーナツをかじって外に出る。
最寄駅までバスで行って10分
でも僕はバスは乗らない。
徒歩で40分程度、それでも歩く。
国道沿いを真っ直ぐ、雲について歩く
バス抜かされて、二人乗りの自転車が近づいて離れていって、イヤホンからは切なげなメロディが流れてがほぼ頭には入っていない。
僕の中は過去でいっぱいになっている。
僕にも愛した人がいた。この道もいっしょに歩いた。友達とただ無邪気に笑いあうそんな日々もあった。
僕は外から見ても内側から見ても普通の少年だった。普通に勉強をして普通に友達と遊び普通に恋愛をし普通に生きていくと思っていた。
最初のコメントを投稿しよう!