おねがいきつね

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 本殿でお祈りした後、脇に連なる小さなお社一つひとつにお祈りしていく。赤い鳥居がズラーッと並ぶ風景は圧巻だ。きっと一つのお社ごとに意味があるのだろうけど、わからないのでとりあえず全部に御賽銭を投げ込んで手を合わせた。お稲荷様だけあって、お賽銭箱の前に時折お金やお酒ではなく、油揚げが置いてある。  「ふーん。食べ物でもいいのかぁ。」カバンの中に手を突っ込んで適当にガサゴソ動かすと、食べかけのカントリーマアムが出てきた。”とりあえず、これでいっか” みなみの安産を祈りつつ置いていく。ズラッと並んだ鳥居の奥、小さなお山にちょこんと乗っかっているお社にも一つずつカントリーマアムを置く。どうせならきつねさん全員に私のお願いを叶えて欲しくて。袋の中はいつの間にか最後の一枚になっていた。 秋子は入り口にそびえ立つきつねの親子の足元そっと最後の一枚を置いた。  「フサッフサッ。」なんかふさふさしてものが顔に当たったみたい…。  「バサバサバサッ!」何?毛ばたきかなんかではたかれた?  目覚めると、真っ白な大きな猫みたいな物体が足元にいた。 ”何これ?” 秋子がびっくりして声を出せずにいると、その物体はよじ登ってきて膝の上にちょこんと座った。 「私は先ほどのきつねです。この子に美味しいものをありがとう。お礼にあなたにちょっとしたプレゼントをするわ。」そう言うと、ボワッと煙を出して姿が見えなくなってしまった。「えっ? なに??」秋子はボーゼンとしたままだった。
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