シンデレラシンドローム

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「はい。突然いなくなってしまって。弟の友人によると、学校に来ていないみたいで。何度電話をしても繋がらないんです。」 「警察には届けましたか。」 「捜索願いは出しましたが、なにぶん子供ではないですし事件性を証明するものもなくて。」 「それでも、費用をかけて探すんですか。」 「思い返せば最近塞いでいたようで、……何か事件に巻き込まれていたり、嫌気がさして東尋坊だとか新小岩にでも行ったらと思うと……。」 「なるほど。」  青年は表情を曇らせた。 「弟さんの家に入れれば、何か手掛かりが掴めると思うのですが。」 「オートロックですし。家族とはいえ、開けてもらうのは難しい。」  青年は、トートバッグから写真を取り出した。子供がひとり写っている。Tシャツ、短パンの格好で、しゃがんでいた。顔だけカメラの方を向いて、いびつなピースサインを作っている。 「随分年が離れているんですね。」 「今は一歳違いです。学年でいうとふたつ下で。……大人になってからの写真はないんですが、姿は僕ににています。」 「それでは、あなたの写真はありますか。」 「僕も同行します。」 「わかりました。その内容であれば、お請けしましょう。」 「費用はお幾らですか。」 「日当が10万円、成功報酬が20万円、交通費・ホテル代などの必要経費は別途です。」 「超能力をお持ちの割に、安いんですね。」 「お金のために働いているわけではありませんから。……弟さんと最後に連絡が取れたのは?」 「電話で話しました。羽田空港にいる、と。」 「いつです。」 「先週の金曜日、今日が土曜だから、ほぼ一週間前です。学校帰りだったのかな、夕方で。声はいつもと変わりないようでした。そのときは気にも止めなかったんですが、どこか遠くへ行ったのかも。自分の意思でどこかに無事でいるなら良いのですが……。」 「弟さんが利用した路線は、モノレールと京急のどちらでしょうか。」 「住まいはトリプルタワーズマンションリヴァリエなので、京急でしょう。」 「それなら品川から乗れますね。行ってみましょう。」  会計の際、探偵が財布を出す気配はなかった。調査は既に始まっている。青年はふたり分の料金を支払い、レシートを受け取った。 「レシート貰っても良いですか。」 「何故です?」 「個人事業主ですから。仕事の打ち合わせでの飲食は経費として申請できる。」 「凄い能力をお持ちの名探偵なのに、せこいんですね。」
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