染める夕陽

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 少し歩くと、公園の真中付近にある展望休憩所に到着。太陽の位置を確認すると、まだ全体が水平線より上にあり、とはいえ確実にすぐ日の入りするであろうという位置で光を放っている。   「この分ならとりあえず端までは大丈夫そうだな」   陽瀬と確認しあい、さらに先の展望台を目指す。   5分ほど歩き到着した展望台は人影は全くなく、そんな中で階段を一番上まで上りきる。全く他に人のいない空間に、眼下に広がる海の作る波音だけが響き渡っている。  そしてその海の先、オレンジ色の太陽はまさにその最下部が海に触れようとしていた。   「思ったよりギリギリだったね」   「本当に、ギリギリセーフってとこだな」  あと少しでも時間がずれていたら、日の入り自体は見られたかもしれないが端までたどり着いてみる事ができず、中途半端に終ってしまったかもしれない。  何の計画性もない旅、というと大げさだが、にしては上手くまとまって良かった。  そんなことも脳裏をよぎりながら、夕陽を眺めていると、夕陽は淡々と水平線に触れ、そしてその姿を完全に隠した。    太陽が沈んだ後の暗い、しかしまだ太陽の明るさも残っている空の下、公園を後にしバス停へと向かう。もちろん、また降りたバス停まで戻ったら本格的に倒れそうだし、なにせ遠いしということでバス停を調べると、『白秋碑前』というバス停が最寄りだったのでそこを目指す。  最寄りと言っても公園の端まで来ていたこともあってか15分ほど歩いたところでようやくバス停にたどり着いた。すると、ここもタイミングよく三崎口駅行きのバスがほとんど同時に到着したので、流れるようにバスに乗った。  何か話そうかなどとも思っていたが、お互い歩き過ぎもあってか疲れてしまったので来た時と同じ最後列の右側の列で並んで寝ていたら、あっという間に終点の三崎口までたどり着いてしまった。  「いや~、ちょっと疲れたけど楽しかったねっ」  「そうだな。まあ楽しかったってよりは、こんな日も良いなって感じかな」  毎日ではなく、たまにだからこそ良い。それがこういうことなのかと実感する。  「今日は日の入りを見たから、次は日の出でも見るか。元旦に初日号ってのが走ってるはずだから、今度はそれで、寄り道じゃなくて初日の出を拝みに来ようか」  「うんっ!」
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