染める夕陽

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 「ご乗車ありがとうございました。まもなく、終点三崎口です。お忘れ物なさいませんようご注意下さい」  「いや~三崎口まで着いたか」  車内放送を聞きふと口走ると、  「そうだね~。まさか学校帰りにここまで来るとはね」  隣の陽瀬はまだ視線を窓の方へ向けたままそう呟いた。  「もっとも、言い出したのは陽瀬だけどな。夏でもないこんな10月なんかに、部活がなくて早く帰れるから三崎口まで行っちゃおう、なんて発想して、しかも実行するのなんて陽瀬ぐらいなもんだろ」  「そういう和也だって、三崎口まで学校帰りに来たって言うのは一緒だけどねっ」  などと話していると、電車は三崎口駅のホームに到着。そのドアを開ける。  終点なので、続々と乗客がドアからホームへと足を進めていくので、その波に乗って俺達もホーム、通路、改札口と通って、駅舎の外へと出た。  「さてと、三崎口まで来たは良いけどこれからどうする?ここじゃ海も見えないし、かといってそのまま帰るってのももったいないし。何か考えてるのか?」  「何にも考えてないよっ。そうだね~、じゃあ海の見えるとこまで歩くとか?ちょうど三浦海岸とかまで歩けば距離的にもちょうどよいんじゃない」  駅前に立っている大きな地図を指差しながら陽瀬が提案してくるが、  「さっき乗ってきて結構遠かっただろ。そんな疲れるのはダメだ。却下」  俺にはそんな体力はない。陽瀬だって俺と同じ将棋部に入ってるっていうのに、この体力の差はいったい何なんだろう。  「そう言うと思った。それならもういっそここ、城ヶ島まで行っちゃう?バスでいけるみたいだし、乗りかかった船だよっ」  「それもそうだな。もっとも、乗りかかったっていうよりは、陽瀬に乗せられたって感じだけどな」  と言いつつも城ヶ島まで行くという案は大いに賛成だ。この前テレビで城ヶ島の企画をやっていたのをちょっと見たという縁もあるし、このまま帰るならいっそ行ってしまおう。という気持ちもある。  そんな俺の心中を知ってか知らずか、陽瀬は目元に笑みを浮かべながら、  「じゃあ決まりだね。あそこのバスはあそこのバス停から出るらしいよ」  と言いながら、右にあるバス停を指さした。  指差した先のバス停にはすでに後ろの行き先表示器に「城ヶ島」と書かれたバスが停車して、エンジン音が耳に入ってくる。
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