第1章

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たよ。赤い電車!」  姉からのメッセージを開いたその瞬間、僕の頭の中に、あるリズムとメロディーが立ち上がった。赤い電車……。     赤い電車に乗っかって     僕はどこかへ行ってしまいたい     赤い電車は羽田から     僕らを乗せてひとっ飛び  くるりの「赤い電車」は、高校生の時によく聴いた曲だった。歌詞の中の「赤い電車」とは京急の電車のことを指しているらしい。それを知って以来、なんとなく京急に対して憧れを抱くようになった。一人暮らし先を京急沿線にしたのも、この曲の影響が大きかった。  僕はどこかへ、行ってしまいたい……まさにそんな心境である。姉たちはまだ、京急蒲田は過ぎていない。今ならまだ合流することができるかもしれない。いっそのこと就活など投げ出して、飛び出して行ってしまおうか。  ……でも、今日こそは始めなければならない。せっかく一日予定のない日なんだ。今日逃げてしまったら、一体この先いつやるというんだ? 断った姉ちゃんにも格好がつかないし、母にも就活のことは言っているだろう。この有様を報告してがっかりさせるわけにもいかない。  ……しかし、どうしてもパソコンを開く気がしない。開いてしまえば最後、もう無理矢理大人にさせられて、二度と戻ってこられない気がするのである。  そんなことをぐるぐると考えていると、ふいに今朝見た夢のことを思い出した。よく見る夢だった。  小学生の頃、毎年夏になると、車で片道2時間ほどかかる母の田舎に行き、そこで開かれる祭りに参加していた。参加といっても屋台を回りながら神輿を眺める程度のものだったが、田舎町の大規模な祭りは子供心をくすぐり、そこにある全てのものが輝いて見えた。  大きな道の両側を埋め尽くす屋台と食べ物の匂い、はち巻をして足袋をはき、祭り囃子に合わせて歌いながら神輿を先導する子どもたち、それに続く屈強な体つきの男女が担ぐきらびやかな神輿の行列……。  そんな祭りに、参加できなかった年が一度だけあった。あれは、いつのことだったかーー。おそらく、小学校高学年のことだっただろう。なぜだか理由は覚えていないが、僕は家で何かしらのだだをこね、さんざん地団駄を踏んだ挙句、置き去りにされてしまったのだ。 「家にいるから、いい。絶対行かない!」  というようなことを言ったことは、なんとなく覚えている。それで僕
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