1.月曜日の宿命

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一週間の始まり、月曜日。 仕事や学校が始まるこの日は多くの人にとって面倒くさい一週間のスタートである。 「はぁまた月曜日か」 「嫌になっちゃうよな。毎日土日だったらいいのに」 「言えてる」 世界の様々な場所でこんな会話が交わされることも珍しくない。 なんのことはない、『毎日が休みであればいいのに』という可愛い願いを人々は口にしているだけ……なのだが。 ここに一人、この会話に傷付いている者がいた。 「ねえ!?俺の扱いひどくない!?月曜日が来るから火曜日も水曜日も来て土日があるんだよ!?」 弟である土曜日にうざがられながらも泣きついているのは話の張本人、月曜日である。 捨てられた子犬のように瞳をうるませながら末っ子である土曜日を相手に理不尽さを訴えていた。 「ちょっと、日(にち)兄さんと僕を僻まないでよ」と冷たくあしらうのは朝食であるいちごジャムをこれでもかと塗りたくったふわふわの食パンを咀嚼している土曜日だ。 七人兄弟の末っ子で、上の六人の兄を反面教師にしているせいか甘えん坊どころか冷静沈着。物言いもストレート、それでいてしっかり者である土曜日。 対して次男である月曜日は他人の言葉を気にしてその度に傷付き、中々感情を抑えられない。 近くにいる兄弟をとっ捕まえては泣きつくのが一週間の始まり、月曜朝の恒例行事だった。 これではどっちが兄でどっちが弟なのかわからない。 「つっちー…人気だからって調子乗るな!」 「いたた、暴力反対!もう、一番人気なのは日兄さんなんだからたまには二番人気も調子乗らせてよ!」 「一週間人気ランキングのワースト一位に向かってそんなこと言うのかお前はあああ!」 なぜか月曜日に追いかけられる羽目になった土曜日は家の中をパンを咥えたまま走る。 月曜日の顔は涙でぐちゃぐちゃで、一番人気と二番人気という単語が月曜日の涙腺を崩壊させたらしい。 一週間の中で恐ろしく人気のない月曜日。 それを気にしすぎるあまり月曜日は人気という言葉にやたら敏感で、どんな時でもついつい反応してしまう。 そしてその反応の仕方というのが大抵の場合怒るか泣くかなのだ。 月曜日の地雷ワード:人気。 このことを忘れていた土曜日は実に面倒くさい兄に捕まってしまったものだとつくづく思った。 「にいはんおひはへへてほないれよ!(兄さん追いかけてこないでよ!)」
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