1.月曜日の宿命

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月曜日の魔の手から逃げていた土曜日の目の前でとある扉が開いた。 中から誰か出てくる。 急ブレーキをかけられない土曜日はそのまま出てきた誰かに激突し、誰かに激突した土曜日に月曜日も激突した。 廊下での玉突き事故による怪我人は幸いにも出なかった。 「いったいなあもう……朝からうるさいよ?爽やかで落ち着きのある朝を過ごそうよ」 土曜日がぶつかってきたお腹の辺りをさすりながら眠そうに目を細めたのはチャラそうな雰囲気の金曜日だ。 「金兄さんだったのか……ごめんね。おはよう」 自分の頭をさすりながら謝る土曜日に金曜日は微笑む。 「つっちーおはよ。大丈夫だから気にしないで。てかさ、そこの月(げつ)、君が一番うるさいし原因なんだけど」 ピッと月曜日を指差す金曜日に月曜日は意味がわからない、という顔をした。 「な、な、お前……仮にも兄に対してその口の利き方はなんだ……!」 「え?なに?よく聞こえない」 「だからぁ!その口の利き方──」 金曜日に説教をしようとするも今度は妨害する者が現れた。 七人兄弟の運動担当、木曜日だ。 ずんずんと廊下の奥から三人の元へ駆け寄ってきた木曜日はなぜか月曜日の目の前で止まり、楽しそうに笑った。 「おっはよーみんな!今日もいい朝だね!ラジオ体操日和!大きく前を開けて背伸びの運動ー!さん、はい!」 空気を読まずにラジオ体操を始める木曜日。 それには無反応な他三人。 空気が読めない木曜日が引き起こす、よくある光景である。 「木兄(もくにい)……」 「ん?」 「踏んでる……」 嬉しそうにラジオ体操中の木曜日の動きを止めてまで金曜日は木曜日の足元に目をやった。 その目線を追いかけた木曜日はハッと何かに気付き、勢いよく月曜日の方を向く。 木曜日は駆け寄ってきた勢いのまま月曜日の足を思い切り踏んづけていた。 月曜日の顔は痛みで歪んでいる。 ただでさえ涙でぐちゃぐちゃなのにさらにひどい顔になっていた。 「えあ!?気付かなかった!?悪いね、げつつ」 「いや、げつつってなに……?初めて聞いた……」 足の痛みと謝る気のない謝罪と初耳のあだ名に疲れた月曜日はふらふらとその場にしゃがみ込んで叫んだ。 「もう!なんなんだよみんな!今日は俺の日なのにー!!!!」 今日は月曜日。一週間で一番嫌われる日。 それは月曜日の宿命である。
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