そこにあったはず・・・

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昼下がり、外では子供たちの声がする。 掛け持ちしている内の一つのバイトを終え、次のバイトまでの時間を潰すため、近くの公園へと足を運んだ。 「元気だな…」 椅子に腰を落ち着かせ、手作りの弁当をつまみながら呟く。 その男、就活に失敗し、年齢は今年で24になり、今では小さなアパートの一室を借りバイトを2つ掛け持ちしつつ正社員を探す男。 少しよれた服を纏い、煤けた靴を履き、独り言を呟きながら子供を眺め弁当を食べていた。 「これが彼女とかとピクニックとかデートだったら…」 いつも通り独り言を呟きながらも元気に走る子供達を眺め、白米に梅干し、おかずはモヤシの炒め物を詰めた弁当を食べていく。 呟きは食べ、呟きは食べを繰り返し弁当を完食した男はバイト先のコンビニで廃棄として出てきた牛乳パックを開け飲み始めた。 質素な弁当だが、別にお金が全くないと言うわけではない。 昔は確かに全く無かったが、掛け持ちをし働き、帰っては寝る。起きればモヤシを炒め、弁当に詰め仕事へと向かう。 そんな生活をしていれば、お金を使う暇はあまりなく散財をする性格でもない彼は貯金が溜まり始めていた。 そんな彼は廃棄の牛乳を飲みながら遊んでいる子供達から空へと目を向け呟く 「独り身だし…もう、正社員じゃなくてもいいんじゃね? 貯金このまま貯めて、老後はそれを切り崩しながらひっそり暮らすのもありだよな」 何度目になるか分からない考え、去年に母も父を追って無くなった。 親戚が居ないわけでもないが今時それほど関わる事もない。 だから無理して正社員とかにつかなくても…保険を掛けるぐらいの稼ぎはまだある。 「あぁ…彼女欲しい…」 ちょっと小難しい事を考えていると、また悲しみを実感する言葉が口から出て行く。 未使用ではないが、ここ数年は全く使われぬ相棒に一瞬目線を移動させつつ深い溜息も同時に漏れた。 頑張る理由が欲しい。 その考えが最近では、彼の夢となっている。 「そろそろ行くか」 時間を確認した彼は、残っていた牛乳を飲み干しゴミを近くのゴミ箱に捨て立ち上がった。 その瞬間 「ホォ…オォx?」 声にならない声を上げた彼 転がったボールをとりに来た子供にまで聞こえたギュルルルルと腹から発せられる唸り声 体内から大きな波が外へと向かおうと一斉に活動を始めた。 「ト、ト、トイレぇ…」
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