この手の温もりを

2/5
前へ
/333ページ
次へ
気づくと、あの事件から、2年の月日が流れていた。 あれから、瑞貴や瑞穂ちゃんのことを想うと、悲しみに気持ちが沈み、また思いもよらず暴き出された、忘れてしまいたい私自身の過去の呪縛に苛まれ、私は、幾度となく心が不安定に揺れた。 でも、そんな時、いつでも陸斗が隣で支えてくれたから、現在(いま)がある。 先週、久しぶりに、陸斗から『遊びに行かないか?』とラインで誘われた。それで、お互い大学の講義のない土曜に会うことになった。 待ち合わせの駅に行くと、陸斗はすでに待っていた。 「陸斗、待った?」 「いや、今来たとこ。電車もうすぐ来るぞ」 「うん」 私達はホームへ続く階段を降りていく。 電車で私達が向かったのは、緑が溢れる大きな公園。暑さの増していく時期だけど、公園の中央にある池と、鮮やかな木々の緑が、涼やかな空気で包んでくれる。 「こういう所来るの久しぶりだな」 「そうだね」 都心の大学に進むのに合わせて、私達はそれぞれ1Rのマンションを借りて住んでいる。
/333ページ

最初のコメントを投稿しよう!

298人が本棚に入れています
本棚に追加