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でも、そんなこと言えないから、心の中に、そっと留めた。
「笹原さん」
声をかけられたので見ると、一年の時、同じクラスだった宮野由奈が、こちらに向かって歩いてくる。
150センチ少しという身長に、ふわりとした茶色がかった髪、丸っこい瞳。相変わらず少女漫画のヒロインみたいに可愛い容姿の彼女。
「もしかして、笹原さんも、アナザーワールドのプレオープンイベントの抽選に当たったの?」
「え……」
じゃあ、宮野さんも当たったってこと?
ということは、うちの高校のイベント当選者は、これで6人いることになる。
不意に、車の走行音がしたので、視線を向けると、石段の下の道路に、一台の黒塗りの車が横付けされた。
運転席のドアが開き、初老の男性が降りると、今度は後部座席のドアを開ける。
中から出てきたのは、三年で生徒会長の九条綾音だった。
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