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九条さんは、旧家のお嬢様。
こうして、よく黒塗りの車が、高校の正門の近くで、彼女を降ろしてるのを見かける。
彼女は、背中半ばまで伸びたサラサラの黒髪を揺らしながら、石段を上ってきた。
そして、門の側にいる私達を見て言う。
「もしかして、あなた達も、アナザーワールドのイベントで来たの?」
九条さんの言葉に、隣にいる宮野由奈が、妙にハイテンションな口調で答えた。
「はい!私達もイベントで来たんです。九条先輩も参加されるなんて、由奈嬉しいです」
……確か、九条さんと宮野さんは同じ茶道部だった気がする。にしても、何だろう、宮野さんの九条さんに向ける眼差しは。両頬を赤らめて、熱のこもった瞳で、彼女を見つめている。
「うちの高校の生徒ばかりね」
私達を見ながら九条さんが言った。
その時、再び石段の下の道路に、一台の白いワンボックスが停まる。
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