アナザーワールドへ

12/28
前へ
/333ページ
次へ
九条さんは、旧家のお嬢様。 こうして、よく黒塗りの車が、高校の正門の近くで、彼女を降ろしてるのを見かける。 彼女は、背中半ばまで伸びたサラサラの黒髪を揺らしながら、石段を上ってきた。 そして、門の側にいる私達を見て言う。 「もしかして、あなた達も、アナザーワールドのイベントで来たの?」 九条さんの言葉に、隣にいる宮野由奈が、妙にハイテンションな口調で答えた。 「はい!私達もイベントで来たんです。九条先輩も参加されるなんて、由奈嬉しいです」 ……確か、九条さんと宮野さんは同じ茶道部だった気がする。にしても、何だろう、宮野さんの九条さんに向ける眼差しは。両頬を赤らめて、熱のこもった瞳で、彼女を見つめている。 「うちの高校の生徒ばかりね」 私達を見ながら九条さんが言った。 その時、再び石段の下の道路に、一台の白いワンボックスが停まる。
/333ページ

最初のコメントを投稿しよう!

298人が本棚に入れています
本棚に追加