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その時、今度は石段の下で、バイクの走行音が聞こえてきた。
(誰……?)
フルフェイスのメットを被っているので、顔が見えない。
その人物は、バイクを停めてエンジンを切ると、メットに両手をかけた。
(えっ……?)
メットの下から出てきた顔に、私は驚く。
それは、三年の黒崎秀一だった。
直接話したりしたことはないけど、校内で有名な人なので知っている。
常に学年トップの成績で、全国規模の模擬試験でも、1桁台の順位らしい。
さりとした黒髪に、フレームの細い眼鏡。
長身で切れ長の瞳に、高校生には見えない落ち着いた雰囲気をまとった彼は、女子生徒の間で人気が高い。
でも、私は、どこか他人を寄せ付けないような冷たい印象を持つ彼をあまりいいと思えない……。
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